SharedWorkerでブラウジングコンテキスト間にWorkerを共有する

SharedWorkerは、同一オリジンの複数のタブやiframeから接続できるWorkerです。タブ間で永続接続や状態を共有でき、type: moduleでES Modulesも使えるようになりました。Baseline 2026で全モダンブラウザでサポートされたSharedWorkerの基本と使い分けを解説します。

公開: 2026年5月15日(金)
更新: 2026年5月15日(金)

はじめに

通常のWorker(Dedicated Worker)はそれを生成したドキュメント1つにだけ紐づき、別のタブやiframeから直接アクセスすることはできません。同じオリジンの複数の画面から同じバックグラウンド処理を使い回したい場合、それぞれの画面でWorkerを起動し直すか、BroadcastChannelなどで橋渡しする必要がありました。

Baseline 2026に追加されたSharedWorkerは、1つのWorkerインスタンスを同一オリジンの複数のブラウジングコンテキストから共有できる仕組みです。デスクトップ向けブラウザは早くから対応していましたが、Chrome for Androidが長らく未実装で、Chrome 148で揃って2026年5月にBaseline 2026入りしました。

SharedWorkerの基本

SharedWorkerはページ側とWorker側のコードがペアで動きます。

ページ側ではnew SharedWorker(url)でWorkerに接続し、返ってきたworker.portMessagePortを経由してWorkerと通信します。MessagePortはデフォルトでメッセージを受け取らない設計で、受信を始めるためのきっかけが必要です。onmessageプロパティに代入する場合は自動でポートが開始されます。

// page.js
const worker = new SharedWorker('./worker.js');

worker.port.onmessage = (event) => {
  console.log('count:', event.data);
};
worker.port.postMessage({ type: 'increment' });

addEventListener('message', ...)でリスナーを登録する場合は自動開始されないので、worker.port.start()を明示的に呼ぶ必要があります。

// page.js
const worker = new SharedWorker('./worker.js');

worker.port.addEventListener('message', (event) => {
  console.log('count:', event.data);
});
worker.port.start();
worker.port.postMessage({ type: 'increment' });

Worker側はSharedWorkerGlobalScopeconnectイベントで、各接続から渡されるMessagePortを受け取ります。

// worker.js
let count = 0;
const ports = new Set();

self.addEventListener('connect', (event) => {
  const port = event.ports[0];
各接続専用のMessagePort
  ports.add(port);

  port.addEventListener('message', (msg) => {
    if (msg.data.type === 'increment') {
      count += 1;
      for (const p of ports) {
        p.postMessage(count);
      }
    }
  });

  port.start();
});

connectイベントは新しいブラウジングコンテキストが接続するたびに発火します。event.ports[0]がそのコンテキスト専用のポートで、これを通じて双方向にメッセージをやり取りします。すべてのポートを集めておけば、いずれかのページで起きた変化を全タブにブロードキャストすることもできます。

event.portsは仕様で「要素1個の凍結配列」と決まっているので、event.ports[1]以降は常にundefinedです。接続後に追加のチャネルが必要になったら、port.postMessage(data, [extraPort])のように第2引数のtransferリストでMessagePortを送り、受け取り側のmessageイベントのevent.portsから取り出します。MessageChannelで作った2本のポートのうち片方をWorkerに渡せば、独立した通信レーンを後付けで張れます。

同一性とインスタンス共有

SharedWorkerはURLとnameの組み合わせで同一性が判定されます。同じURL(と同じname)で複数回new SharedWorker(...)しても、起動済みのWorkerが再利用され、connectイベントが既存のWorkerに対して新しいポートを通知するだけです。

const a = new SharedWorker('./worker.js');
const b = new SharedWorker('./worker.js'); // 同じWorkerインスタンスに接続

別のnameを渡すと、同じスクリプトから独立したインスタンスを起動できます。

const realtime = new SharedWorker('./worker.js', { name: 'realtime' });
const analytics = new SharedWorker('./worker.js', { name: 'analytics' });

ライフタイムは、いずれかの接続が生きている限り維持されます。すべての接続元ドキュメントが閉じられるとWorkerも終了します。

スクリプトのトップレベルコードは、SharedWorkerが起動するときに一度だけ実行されます。以降は同じURL・namenew SharedWorker(...)しても再実行されず、connectイベントだけが追加で発火して新しいMessagePortが渡されます。先ほどのworker.jslet count = 0;const ports = new Set();が1回だけ評価される一方で、connectハンドラが接続のたびに走るのはこのためです。タブをまたいだ状態をWorker側のグローバルに置けるのが、SharedWorkerの旨味でもあります。

タブ間で同期するカウンタを作ってみる

ここまでの動きを実際に試せるPlaygroundを置いておきます。

タブ間カウンタ

このページを別タブでもう一度開くと、Worker起動時刻が両タブで一致し、 どちらかのタブで「+1」を押すと両タブのカウンタが同期するのが見えます。

共有カウンタ

0
Worker起動時刻
...
接続中のタブ数
0

このPlaygroundのWorker側コードは次の通りです。

// /playgrounds/shared-worker.worker.js
const STARTED_AT = Date.now();
let count = 0;
const ports = new Set();

const broadcast = (message) => {
  for (const p of ports) {
    p.postMessage(message);
  }
};

self.addEventListener('connect', (event) => {
  const port = event.ports[0];
  ports.add(port);

  port.postMessage({
    type: 'init',
    startedAt: STARTED_AT,
    count,
    connections: ports.size,
  });
  broadcast({ type: 'connections', connections: ports.size });

  port.addEventListener('message', (msg) => {
    if (msg.data?.type === 'increment') {
      count += 1;
      broadcast({ type: 'count', count });
      return;
    }
    if (msg.data?.type === 'disconnect') {
      ports.delete(port);
      broadcast({ type: 'connections', connections: ports.size });
    }
  });

  port.start();
});

ハイライトしたSTARTED_ATはWorkerが起動した瞬間のタイムスタンプで、トップレベルが一度しか実行されないことを目視で確認するために置いています。タブを追加で開いても同じ時刻が両タブに表示されるので、let count = 0portsのSetがタブごとには初期化されないことが見て取れます。

ES Modulesとして読み込む

Baseline 2026ではtype: 'module'オプションも揃い、SharedWorkerをES Modulesとして実行できるようになりました。

// page.js
const worker = new SharedWorker('./worker.js', { type: 'module' });

Worker側ではimport文がそのまま使えるため、メインスレッドと同じモジュールをWorkerから読み込んでロジックを共有できます。

// worker.js
import { calculate } from './shared-logic.js';

self.addEventListener('connect', (event) => {
  const port = event.ports[0];
  port.addEventListener('message', (msg) => {
    port.postMessage(calculate(msg.data));
  });
  port.start();
});

モジュールWorkerにはいくつか挙動の違いがあります。

  • importScripts()はモジュールWorker内で呼び出すと失敗する。代わりにimportを使う
  • スクリプトは自動的にStrict modeで実行される
  • トップレベルのvar / function宣言はモジュールスコープに閉じ、Worker全体のグローバルを汚染しない
  • credentialsオプション('omit' / 'same-origin' / 'include')が有効になり、モジュールのフェッチに使う認証情報を制御できる

なお、起動中のSharedWorkerに対して異なるtypecredentialsnew SharedWorker(...)しようとするとエラーになります。classicモードとmoduleモードを同居させたいときは、別のnameを指定して別インスタンスとして扱います。

type: 'module'の挙動はService Workerの場合とほぼ同じです。Service Worker側の解説はService WorkerでES Modulesを使うを参照してください。

使いどころ

SharedWorkerが効くのは、同一オリジンの複数の画面が同じバックエンド処理を共有したい場面です。

  • WebSocketなどの永続接続をタブごとに張らずWorker側で1本にまとめる
  • リアルタイム更新やプッシュ通知の受信ポイントを集約し、開いている全タブへ配信する
  • 重い計算やキャッシュをタブ間で共有して、二重実行を避ける
  • ログイン状態やフィーチャーフラグなど、タブをまたいだ状態の単一の窓口を作る

逆に、ページの裏でちょっとした処理を回したいだけならDedicated Workerで十分です。SharedWorkerは1つの状態を複数のタブが共有することで初めて効果が出るので、共有する価値のあるリソースがあるかを最初に確認するとよいでしょう。

おわりに

SharedWorkerはタブ間で1つのWorkerを共有できる仕組みで、ようやくBaseline 2026で全モダンブラウザに揃いました。同じタイミングでtype: 'module'もサポートされたので、メインスレッドと同じES ModulesをWorkerからも読み込めて、コード共有のしやすさが一段引き上がっています。

タブをまたいで共有したいリソースがある場面では、BroadcastChannelとの組み合わせも検討しつつ、SharedWorkerを引き出しに加えてみてください。

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